「うちの会社では、店長は管理職だから残業代は出ない」
このような説明を受け、長時間働いても当然のように残業代が支払われないという相談が多く寄せられています。しかし、“管理職”という肩書きだけで残業代が不要になるわけではありません。
労働基準法が定める「管理監督者」に該当するかどうかは、形式ではなく実態によって判断されます。この点は多くの裁判例でも繰り返し確認されており、企業側の説明が法的に正しくないケースも少なくありません。
労働基準法第41条第2号では、「監督若しくは管理の地位にある者」は、労働時間・休憩・休日の規定が適用されないと定められています。
しかし、厚生労働省のガイドラインおよび判例実務では、次のような3つの要素をもとに「管理監督者性」を判断しています。
▷① 経営上の重要事項に関与しているか
例:店舗運営の方針決定に関与しているか、人事・予算の決裁権限があるかなど
▷② 労働時間に対する裁量があるか
例:シフトや出退勤時間を自分で調整できるかなど
▷③ 地位や待遇が一般職員と比べて相応に優遇されているか
例:給与、手当、賞与が管理監督者としての地位にふさわしいかなど
この3要素を満たさなければ、肩書きが「課長」や「店長」でも管理監督者とは認められません。
◉マクドナルド店長事件(東京地裁平成20年1月28日判決)
<裁判所の判断ポイント>
・実質的に勤務時間の自由がない
・部下の採用やシフト決定も店舗内の事務に限られ、経営上の重要事項には関与していない
・給与も管理監督者に対する待遇として十分であるとはいい難い
「名ばかり管理職」は、会社の人件費削減目的で運用されていることもあります。
よくある相談パターン
これらは不当な運用の典型例です。労働時間の実態を証明できれば、残業代請求の可能性は十分にあります。また、一切残業代の清算が行われていないので、請求できる残業代も高額に上るケースが多いです。
●証拠がすべてを決める
残業代請求で最も重要なのは「証拠」です。特に「管理監督者性が否定される実態」の裏付けが必要です。
<証拠として有効なもの>
●弁護士に相談するタイミング
「管理職だけど、労働条件が違和感ある」と思った段階で、証拠が揃っていなくても一度相談することをおすすめします。なぜなら、証拠保全の方法や相手方への請求手段は、弁護士の関与により大きく戦略が変わるためです。
管理職と呼ばれていても、それが実態を伴わない“名ばかり”であれば、残業代請求は可能です。裁判例は、「実質を重視する」姿勢を一貫して示しています。泣き寝入りせず、一歩を踏み出してみてください。また、弁護士費用特約がついていれば実質的な費用負担はゼロで弁護士に依頼できるケースもあります。
▶【池袋・練馬区で残業代未払いに悩む方】 あなたのケースも残業代を請求できるかもしれません
アスカル法律事務所では、「名ばかり管理職」に関する無料相談を受付中です。勤務実態をヒアリングのうえ、請求可能性を判断いたします。