交通事故によって顔に傷が残ってしまった場合、その傷跡が一定の基準を満たせば、自賠責保険の後遺障害として認定される可能性があります。顔は人目に触れやすい部位であり、傷跡が残ることによる精神的苦痛は非常に大きいものです。そのため、自賠責保険では顔や頭部、首などの外見上の傷跡について「外貌醜状」として後遺障害等級を定めています。以前は男女によって認定基準が異なっていましたが、現在では性別による区別はなくなり、同一の基準で判断されています。
外貌醜状とは、頭部、顔面部、頸部などの露出部分に傷跡が残り、外見に変化が生じた状態をいいます。
具体的には次のようなものが対象となります。
●火傷による色素沈着
単に傷があるだけでは認定されず、一定以上の大きさや程度が必要になります。
外貌に著しい醜状を残すもの
顔面に著しい醜状が残った場合には後遺障害7級12号が認定されます。
具体的には、
外貌に相当程度の醜状を残すもの。
顔面に相当程度の醜状が残った場合には9級16号が認定されます。
顔面部に残った長さ5センチメートル以上の線状痕が対象となります。
外貌に醜状を残すもの
比較的小規模な傷跡であっても、一定以上の大きさがあれば12級14号に該当する可能性があります。
が該当するとされています。
後遺障害は、治療を続けてもこれ以上の改善が見込めない状態(症状固定)になった時点で申請します。
外貌醜状においては肉体的な痛みを伴うものではないことが多いため、どこまで治療するべきかという明確な基準を定めることが難しい側面があります。顔の傷の場合、傷跡が成熟するまで時間を要することがあります。事故直後は赤みが強くても、時間の経過によって目立たなくなることもあるため、主治医と相談しながら適切なタイミングで申請することが重要です。
傷の状況によっては他の部位で治療中であったとしても、顔面の醜状痕についてのみ先に症状固定として後遺障害申請を行うなどの手続きも検討する必要があります。
顔の傷に関する後遺障害認定では、写真資料が非常に重要になります。
自賠責調査事務所では、
などを用いて傷跡の状態を確認します。
写真の撮影方法や被害者の顔の特徴などによって傷の見え方が大きく変わるため、弁護士や専門家に相談しながら準備することが望ましいでしょう。また、写真ではどうしてもわかりにくい場合は調査事務所に対して面接での確認を求めることも必要になるケースもあります。
顔面の傷が残る事故の場合、頭部を強く打ち付ける事故態様が多いため、醜状痕以外にも治療が必要なケースが多いです。その場合、醜状痕について着目しておらず、後遺障害診断書に醜状痕の記載が漏れている場合があります。そのため、頭部を強打した事故であれば醜状痕が残っていないかよく確認し、正確な後遺障害診断書を作成する必要があります。
後遺障害が認定されると後遺障害慰謝料を獲得することが出来ます。
しかしながら、弁護士を付けた場合(弁護士基準)とそうでない場合(自賠責保険基準)、以下の通り金額に大きな差が出るケースがあります。
| 後遺障害等級 | 自賠責保険基準 | 弁護士基準 |
| 7級 | 419万円 | 1000万円 |
| 9級 | 249万円 | 690万円 |
| 12級 | 94万円 | 290万円 |
後遺障害が認められれば上記の通り慰謝料が認められますが、逸失利益が認められるかどうかについては問題があります。傷跡についてはそれ自体が身体機能を左右するものではないため、労働能力の喪失が認められるのかが大きく争われます。
被害者の性別、年齢、職業等の事情を踏まえ労働能力の喪失が認められるのか、労働能力への直接的な影響は認められなくても、対人関係や対外的な活動に消極的になるなどの形で間接的に労働能力に影響を及ぼすおそれが認められるのかといった点に着目し、被害者の不利益を丁寧に主張・立証していく必要があります。
交通事故によって顔に傷が残った場合、その傷跡は「外貌醜状」として後遺障害に認定される可能性があります。認定されるためには傷跡の大きさや状態を適切に立証することが不可欠です。
交通事故で顔に傷が残ってしまった場合には、適切な写真や後遺障害診断書をそろえたうえで、後遺障害認定の手続きを進めることが重要です。弁護士に相談しながら進めることで、適正な補償を受けられる可能性が高まるでしょう。
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